甲状腺
甲状腺とは
甲状腺は、甲状腺軟骨先端のすぐ下にある小さな臓器です。蝶が羽根を広げたような形をしており、気管を取り囲むように位置しています。あまり聞きなれない方もいらっしゃるようですが、全身の新陳代謝や成長の促進にかかわるホルモンを調節する非常に重要な役割を担っています。当院では、日本内分泌学会の認定専門医が中心となり、甲状腺の病気の検査や治療を幅広く行っています。
甲状腺の病気について
甲状腺の病気は、甲状腺機能異常(ホルモンの異常)と腫瘍性疾患(甲状腺のしこり)に分かれます。
甲状腺機能異常(ホルモンの異常)について
甲状腺機能異常は甲状腺から出るホルモンが上昇する甲状腺中毒症と、低下する甲状腺低下症に分けられます。
甲状腺機能異常でよくみられる症状
(甲状腺ホルモンが高いとき)
安静にしているのに、心臓がドキドキする
手指が細かく震える
暑がりになった、汗をたくさんかく、皮膚が湿っている
よく食べているのに痩せてきた
イライラしやすくなった、落ち着きがなくなった
(甲状腺ホルモンが低いとき)
体が冷え、寒がりになった
肌が乾燥し、カサカサする
体が重く、だるさを感じる
食欲が無いのに、太ってきた
朝起きた時に、顔や手がむくんでいる
便秘しやすくなった
昼間も眠く、居眠りをするようになった
脈がゆっくり静かになった
甲状腺ホルモンが上昇する甲状腺中毒症には甲状腺の機能が亢進するバセドウ病や、甲状腺が何らかの原因で破壊される破壊性甲状腺炎があります。
バセドウ病は、甲状腺ホルモンが過剰につくられる病気、すなわち甲状腺機能亢進症を引き起こします。自身の甲状腺に対する抗体が産生されることによって甲状腺が刺激され過ぎてしまい、過剰に甲状腺ホルモンを分泌するようになります。
一方、破壊性甲状腺炎として無痛性甲状腺炎や、有痛性の亜急性甲状腺炎があげられます。自然に良くなる病気ですので特に治療の必要はありませんが、甲状腺ホルモン過剰による症状が明らかなときや痛みが強い場合は、薬を使用します。間違ってバセドウ病と診断され、抗甲状腺薬が処方されてしまうことがあるため、採血検査や超音波検査を用いてしっかりと鑑別診断を行うことが重要です。
甲状腺機能低下症の代表的な病気として橋本病(慢性甲状腺炎)があり、女性に多く見られます。甲状腺ホルモンの量が不足することにより、新陳代謝が低下し、全身が老けていくような症状がみられます。無気力になって頭の働きが鈍くなるので、忘れっぽくなったり、認知症の原因の1つになったりします。寒がりになる、皮膚も乾燥してカサカサになる、体全体がむくむ、眠気が強まる、息切れ、肩こり、月経不順などの症状もよく見られます。甲状腺機能が低下している場合はホルモン剤を補充します。
腫瘍性疾患(甲状腺のしこり)について
甲状腺のしこりは良性と悪性に分かれます。甲状腺腫瘍の大部分は良性ですが、一部は悪性のものもあります。初期の段階では無症候性のことが多いので、発見が遅れるケースもよくあります。喉の腫れなどに気付き、医療機関を受診したときは腫瘍が相当程度以上に大きくなっていることも少なくありません。当院では超音波検査や血液検査によって、腫瘍の評価を行っております。精密検査が必要な場合は、総合病院甲状腺外科にご紹介させていただきます。